胸やけ・胃もたれ
胸やけ・胃もたれ

みぞおち周辺の不快感やもやもやした感覚、いわゆる「胃がムカムカする」という症状を経験したことがある人は多いのではないでしょうか。胃がムカムカする症状には、一過性のものから病気のサインまで、さまざまな可能性が考えられます。
ここでは、胃のムカムカ感の原因や症状、考えられる病気、対処法について解説します。「もしかして自分も…」と思われた方は、生活習慣を見直したり、受診を検討したりしてみてください。
「胃のムカムカ」には、みぞおちのあたりに重苦しさやもやもやとした違和感、痛みを伴います。食後に症状が強まったり、逆に空腹時に感じたりするなど、食事に関連して生じることが多いです。
胃の働きの低下や知覚過敏、胃酸の過剰分泌・逆流など、胃の状態に問題が生じている可能性があり、注意が必要です。
胃がムカムカするのは、主に以下のような原因があります。
食生活や生活習慣の乱れ
食べ過ぎや飲み過ぎは、胃がムカムカする原因の代表例です。特に、アルコールの飲み過ぎや脂っこい食事、香辛料・コーヒーなどの刺激物のとりすぎは胃に負担をかけます。また、早食いや不規則な食事時間、就寝直前の食事も胃の不調を招きます。
また、喫煙や睡眠不足、慢性的な疲労、運動不足なども胃の調子を崩す要因の一つです。
ストレス
強いストレスは自律神経のバランスを崩し、胃の動きや胃酸の分泌に影響を与えます。その結果、食べたものが消化されにくくなり、胃のムカムカにつながることがあります。現代社会では30~50代の約半数以上の人がストレスを抱えているとされており、胃の不快感を訴える方も多くなっています。
ピロリ菌感染
ピロリ菌に感染すると、菌が作り出すアンモニアなどの有害物質により、胃のムカムカ感や胃痛を引き起こすことがあります。感染したまま放置すると、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんのリスクが高まるため、除菌治療が重要です。
薬の影響
ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胃粘膜を荒らし、ムカムカ感や胃痛を引き起こすことがあります。
その他
加齢による胃の機能低下、女性のホルモンバランスの変化(月経前症候群や妊娠初期のつわり、更年期など)も胃の不調の原因となります。また、他の消化器疾患や臓器の病気が原因となることもあります。
胃がムカムカするという症状に加えて、消化機能の低下や胃酸の逆流に伴う症状がみられることがあります。消化機能が低下すると食べものが胃に長く留まるため、胃が重たい感覚や満腹感、食欲不振などが生じがちです。
また、胃酸が過剰に分泌されると逆流が起こります。胸焼けやゲップ、酸っぱいものがこみ上がる感じなどの症状が代表的です。胃酸によりのどが荒れ、のどの痛みや咳、声がれがみられる場合もあります。特に横になったときや前かがみになったときに、症状が強くなる傾向があります。
複数に当てはまる場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。特に最後の2項目は、胃潰瘍や胃がんなどの病気の恐れがあるため、早めの受診をおすすめします。
胃のムカムカの原因を特定するためには、まず詳細な問診を行います。問診の内容は、症状が始まった時期や食事との関連性、既往歴、服用中の薬、生活習慣などの項目です。
さらに、必要に応じて以下のような検査を行います。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
食道や胃、十二指腸の粘膜を直接観察し、炎症や潰瘍、ポリープ、がんなどの異常がないかを確認します。異常がある場合、組織を一部採取して詳しく調べることもあります。
腹部超音波(エコー)検査
肝臓、胆のう、すい臓など、みぞおちから脇腹周辺の臓器を中心に、異常がないかを調べます。
ピロリ菌検査
内視鏡検査を使って直接確認する方法と使わない方法があります。内視鏡を使わない場合、呼気に含まれる二酸化炭素や血液や尿にある抗体、便の中の抗原を確認することで感染の有無を調べます。
血液検査
胃の炎症の程度、貧血の有無、肝機能や膵機能などを評価します。
その他、必要に応じて腹部X線検査やCT検査なども行われることがあります。
胃のムカムカ感を主訴とする主な病気には以下のようなものがあります。
急性胃炎・慢性胃炎
胃粘膜の炎症です。食べ過ぎや飲み過ぎ、ストレス、薬、ピロリ菌感染などが原因となります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃炎が進行し、胃や十二指腸の粘膜が深く傷ついた状態です。ピロリ菌感染と非ステロイド性抗炎症薬が主な原因とされます。
逆流性食道炎
胃酸や胃の内容物が食道へ逆流し、食道の粘膜に炎症が生じた状態です。中高年や高齢者に多くみられ、食べ過ぎや早食い、肥満、脂肪の多い食事などが原因となります。
機能性ディスペプシア
内視鏡検査などで異常が見つからないにもかかわらず、胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛みなどの症状が続く状態です。
胃がん・食道がん
初期には症状が乏しいことが多いですが、進行すると胃のムカムカ、食欲不振、体重減少などの症状が現れることがあります。
その他、感染性胃腸炎、腸閉塞、虫垂炎、胆石症やすい炎などでも、関連症状として胃のムカムカ感がみられる場合があります。
治療は、原因となっている疾患や状態に応じて行われます。
食事の改善が基本です。消化の良いものをバランス良く摂取し、暴飲暴食、早食いを避けます。脂っこいものや辛いもの、アルコール、カフェインなどは胃に刺激を与えるため、控えめにします。また、禁煙や十分な睡眠、適度な運動を心がけるなど、生活習慣を整えることも大切です。
症状や原因に応じて、以下のような薬が処方されることがあります。
胃酸分泌抑制薬
プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーなどで胃酸の分泌を抑制します。
胃粘膜保護・修復薬
胃の粘膜を保護し、傷ついた粘膜の修復を促します。
消化管運動機能改善薬
(消化促進薬)
胃の動きを活発にし、食べものの消化を助けます。
除菌治療
ピロリ菌を除菌するための治療です。胃酸分泌抑制薬と2種類の抗菌薬を組み合わせた治療を、通常7日間行います。
お腹の調子が悪くても、検査や病院受診をためらってしまう方は少なくありません。特に胃カメラなどの検査に抵抗を感じる方も多いのですが、現在は鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査方法もあります。
当院では患者さん一人ひとりに合わせた丁寧な診療を心がけています。胃の健康についてのお悩みは、どうぞお気軽に当院の消化器内科専門医にご相談ください。
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